信州人    

画家

藤堂 聿さん

絵を描くことが心の支え

幼い頃から絵を描くのが好きで、手元にはいつもスケッチブックがありました。父親は会社員でしたが休日に油絵を描いたり、木工をする姿を見て育ちました。一緒に白樺湖へ行きスケッチをしたり、以前御代田町にあったメルシャン軽井沢美術館にもよく連れていってもらいました。作品から受けた強烈な感覚は今も鮮明に残っていて、とても貴重な体験だったと感謝しています。 中学校入学直後から不登校になりました。当時は不登校が今より世間的に悪いことというイメージが強く、自分の中で重みを抱えながらも、黙々と勉強し、絵を描いて過ごしました。学校には行けませんでしたが、絵のおかげで心は元気な状態でいられたのだと思います。高校時代は友だちにも恵まれて3年間通いました。高校で美術部に入部し、恩師の高柳先生と出会い、のびのびと自由に活動することができました。部室の黒板に先生が書いた「継続は力なり」という言葉が座右の銘になっています。 進路選択の際に美術系に進むのは現実的ではないと思い、高校卒業後は調理学校に進学。その後ホテルに就職しましたが体調を崩し退職。自信をなくして落ち込み、心身の痛みも経験しました。そんなときに心の支えになったのがやはり絵を描くことでした。このとき、「ずっと続けていきたいのは絵を描くことだ」と確信し、画家になろうと決心しました。

作品の多くがモノクローム。「気持ちが安定する灰色が好き。自分の好きな色で自由に見てほしい」と藤堂さん

絵を描くことを続けていきたい

2018年に作家としての活動を開始し、絵の展示も行いました。2回目の展示で自分の絵を買っていただくことができました。衝撃と同時に勇気をもらい、誇りにもなり、そんな出来事が少しずつ重なっていきました。画家と名乗っていいのかという不安はありましたが、家族に支えられながらイラストの受注やコンペティションに挑戦。また、芸術をきちんと学びたいという思いから、大学に入り学士号を取得。画家としての自信や勇気を重ねていきました。 2024年には初めて個展を開催。ギャラリーの方や来場者の優しさに触れ、多くのものを得ることができました。人と人が対話することで自分の描いたものへの情景がさらに深まることを体感し、人との対話の大切さも学びました。

6月は御代田のGokalab(ゴカラボ)で写真と絵の二人展、7月には長野市のギャラリー豆蔵で個展を開催

環境に優しい制作を目指して

初めて個展を開催した頃は内省的な作品が多かったのですが、描きたい形が少しずつ変わってきていることを自分自身でも感じています。テーマにしているのは「心」。侘び寂び、空白や余白を取り入れ作品自体に力があるものを目指しています。描きたいことは自然への畏敬の念。 以前は扱いやすいアクリル絵の具を使用していましたが、最近は環境に良いものを選び、炭や膠(にかわ)、胡粉といった自然由来のものを使っています。大切に扱わないと描けないので、真面目に真剣に、そして丁寧に敬意を持って制作しています。 夢は絵を通して地域に関わり、貢献すること。現在は内山和紙や立岩和紙など長野県の紙と墨を使った制作にも取り組んでいます。ここで生まれたことに誇りを持ち、地に足をつけ、ゆっくりと自分にできることを実行していきたいです。


とうどう いつ 1992年佐久市望月生まれ 油彩に親しんでいた父親を見て育ち、幼少期から絵を描いて育つ 2022年大阪二科展デザイン部門 全国ポストカードデザイン大賞 大賞受賞 第2回関西アートコンペ 兵庫県芸術文化協会賞 優秀賞受賞2024年京都芸術大学芸術教養学士取得




TOP