
百日咳のことを知ろう
今年よく耳にする『百日咳』。名前の由来は「咳が100日も続く」ことと言われています。その歴史は古く、数百年前から診断されている感染症で、いずれの年代でもかかりますが、特に小児が中心となっています。百日咳のことを詳しく知り、予防や感染拡大防止につとめましょう。

百日咳ってどんな病気?
百日咳は、百日咳菌という細菌によって引き起こされる呼吸器感染症です。咳が長期間続くのが特徴で、名前の通り、発症から治るまでに60〜90日ほど掛かってしまいます。注意すべき点として、生後6ヶ月未満の乳幼児は特に重症化しやすいことです。乳幼児では激しい咳によって呼吸ができなくなったり、嘔吐を繰り返し哺乳ができなくなったりするため、入院での治療が必要になることがあります。家族内での感染も多いため赤ちゃんがいるご家庭は特に注意しましょう。
どうやって感染するの?
百日咳は、感染した人の咳やくしゃみによって空気中に飛び散った菌を吸い込むことで感染します。感染力は強く、家庭や学校などで感染が広がりやすいです。
どんな症状が出るの?
百日咳の症状は、経過によって少しずつ変化します。 •初期(カタル期):風邪のような症状(鼻水、くしゃみ、軽症の咳など)が2週間ほど現れます。この時期は、一般的な風邪との違いが少なく百日咳と気づきにくいことが多いです。 •中期(痙咳期):特徴的な激しい咳へ変化し、2~3週間続きます。連続した止まらない咳と、咳の終わりに「ヒュー」という吸い込み音(吸気性笛声)が出ることがあります。咳き込み後の嘔吐や無呼吸発作が出現することもあります。 •後期(回復期):咳の回数や程度が、2~3週ほどで徐々に改善します。
どうやって診断するの?
百日咳の診断には、主に以下の方法があります。 •鼻咽頭ぬぐい液検査:鼻の奥の粘液を採取して、百日咳菌がいるかどうかを抗原や遺伝子から調べます。 •血液検査:血液中の抗体の量を測定して、百日咳菌に対する免疫反応があるかを調べます。 感染の時期によって症状は継続・悪化するものの、原因の百日咳菌は少なくなる傾向があるため、検査によっては反応しづらく判定が困難になることがあります。このため年齢や経過によって適切な検査を選択することが勧められます。
どうやって治療するの?
百日咳の治療には、主に抗菌薬(抗生物質)が使われます。早期に治療を開始することで、症状が長引くことや悪化することを防ぎ、感染の拡大を抑えることができます。しかし、痙咳期以降の治療では、百日咳毒素による咳が残るため、治療を開始した後であっても咳などの症状がしつこく残ってしまうことがあります。
予防するには?
百日咳を予防するためには、ワクチン接種が最も有効です。百日咳は、現在、五種混合ワクチン(以前は四種混合ワクチン)として、乳幼児期から定期接種が行われています。ワクチンの定期接種を行うことで免疫の獲得が期待されます。ただし、ワクチンの効果は時間とともに減弱するため、学童期以降での感染拡大と、学童期以降のきょうだいから乳幼児への家庭内感染の危険性が報告されています。日本小児科学会では、任意接種ではありますが、小学校入学前の三種混合ワクチンを追加することで学童期以降の感染を予防することが推奨されています。
最後に
•日頃から感染予防の基本である手洗いや、体調管理に気を付けてください。 •ワクチン接種によって自分だけでなく、家族や周りの方々も感染から守りましょう。 •自分や周囲に長引く咳や強い咳が目立つ場合は早めに医療機関を受診しましょう。 •赤ちゃんがいるご家庭は特に注意が必要です。
